技術・サービス
2022/12/15
省人化で課題を解決!
ロボットを活用した無人店舗で最高のお客さま体験を
9月13日、KDDIは渋谷モディ1階に「auミニッツストア 渋谷店」をオープンしました。なんでもこの店舗ではロボットが働いており、商品のピッキングから袋詰めまでを自動でしてくれるらしい......。そんなウワサを元に事業創造本部 LX戦略部の武田さんにインタビューし、店舗の仕組みは一体どうなっているの? なぜKDDIが店舗を運営しているの? ロボット活用ならではの難しさは? などなど、気になることを聞いてみました!
目次
■インタビュイー略歴
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武田 裕子
- 事業創造本部 LX戦略部 戦略2グループ
「auミニッツストア 渋谷店」はここがスゴイ!
▲au style直営店内に店舗を構え、auショップへの導線もバッチリ‼店舗サイズはバックヤードを含めて約50㎡とすご〜く省スペース!
▲まるでATMのような商品受け取り口。ロボットが袋詰めしてくれた商品が出てくると思うとワクワクします……!
▲商品棚の様子。商品の温度帯管理によって冷たいドリンクも取りそろえています!
▲働き者のロボットがお茶をお届け中。アームの先端にある吸盤でしっかり商品をキャッチ♪
▲デリケートなデザート商品が来たぞ……つぶさないように気をつけて!
▲menuの配達員さんが到着しました〜!休憩するヒマもなくすぐに商品が出てきます
面倒な袋詰めもロボットにお任せ
「auミニッツストア 渋谷店」の概要を教えてください。
ロボットが商品のピッキングから袋詰めまでを完全自動で行う店舗です。バックヤードでは人が商品を補充・回収しているので完全無人とは言えませんが、一般的な店舗に比べて大幅な省人化を実現しています。デリバリーアプリ「menu」からのオンライン注文に対応しており、店舗の商品が売り切れるとリアルタイムにアプリに反映されることも特徴の一つです。2022年9月13日にオープンし、2023年3月末までの期間限定予定のショップです。
現在取り扱っている商品はローソンの飲料やデザート、コストコの食料品や日用品など100種類以上で、テイクアウト(店舗でのお受け取り)とデリバリー(配達員によるお届け。「auスマートパス」会員は配送料が無料)の両方が選択可能です。商品の予約受け取りが可能なため、例えば事前にモバイルで注文しておき、手ぶらでショッピングを楽しんだ後に店舗で商品を受け取るといった利用シーンも人気です。
■利用方法
欲しいものをクイックに手元に届ける、次世代の配達サービス
武田さんの役割を教えてください。
LX戦略部では新規事業の企画やLX分野の事業戦略を組み立てています。私はその中でQ(クイック)コマース事業を取りまとめており、その一環で無人店舗を運営することになりました。
皆さんはQコマースをご存じでしょうか? 日本語では「即配」という意味で、注文から配達までの時間が短く、欲しいものがすぐに手に入る配達サービス全般を指します。LX戦略部では、すでに料理された食事を配達するフードデリバリーを除いて、食品や食材、日用品などの即配事業をQコマース事業としています。
KDDIはmenu社と業務資本提携を結んでおり、①スーパーをはじめとする提携加盟店の食品・食材などを配達員が届けてくれる買い物代行サービス、②アプリからの注文と連動した実店舗(auミニッツストア)の運営という2つの軸でQコマース事業を展開しています。
パートナーシップを強みに半歩先の未来をつくりたい
Qコマース事業の中でもなぜ「無人店舗」に取り組むのでしょうか?
大きく2つあります。一つは少子高齢化に伴う労働力人口の減少が社会全体の課題となっていること。ここ数年、解決に向けてさまざまな産業で自動化や省人化に関連する技術の実装が進んでいます。そうした中でKDDIとしても自動化による無人店舗をオープンすることで、サステナブルな社会づくりに寄与できるのではないかと考えました。
もう一つは、お客さまがお買い物をするときの体験がリアルからデジタル上の接点に変わりつつあることです。コロナ禍にECやフードデリバリーが大きく伸張したように、今後は多くの購買体験でスマートフォンからの注文・購入が主流になるかもしれません。そこでモバイルからの注文に応える実店舗側の仕組みとして、ネットワークを活用したロボット店舗の存在がお客さまの新しい選択肢になると考えました。ロボットが働いている店舗はめずらしいので、話題性もあるのではないでしょうか?
▲「Amazonや楽天などのECサイトの配達時間は最も早くて翌日(Day)、ネットスーパーは午後便などの時間単位(Hour)ですが、auミニッツストアはより短く数十分(Minutes)で届けることができます」と武田さん(グループメンバーからいただいたロボットの貯金箱とご一緒に)
パートナー企業との連携についても教えてください。
「auミニッツストア」で働くロボットは、ロボティクス技術を核とするROMS社にご提供いただいています。店舗の仕組みとしては、menuさんが公開しているAPI(注1)をROMSさん側でも連携することで、アプリの注文情報に連動して店舗のロボットが動きます。そうしたアプリとロボットの連携から店舗の企画、運営をKDDIが担当しています。
※注1:アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)の略称
ROMSさんは「お客さまの購買体験の変化に対応し、ニーズにマッチする仕掛けを社会に実装していきたい」というKDDIと共通のビジョンを掲げていたため、お声掛けを前向きに受け入れていただきました。
事業創造本部が新規事業を立ち上げるときの大方針として、パートナリングによって自分たちにないアセットを持っている企業とKDDIの強みをかけ合わせることを意識しています。今回は3社間のパートナーシップによってロボットが商品のピッキングと袋詰めを行い、それをデリバリー事業者との連携によって配達もできる店舗を実現することができました。
より良いお客さま体験のために努力を惜しまない
店舗運営で心掛けたことやこだわったポイントはありますか?
何よりも意識していたのは、お客さまにとって心地よい体験を提供することです。利用される方にとって、本当に良いサービスになっている。そう実感できるまで、注文から受け取りまで全ての段階で、一つ一つの体験をブラッシュアップしました。
例えば、当初はショッピングバッグとして紙袋を用意する予定でしたが、実際に商品が出てくる端末に紙袋を合わせてみると形状がフィットしない、取り出し口に袋が引っかかるなどの課題が見えてきました。これでは快適な体験とはいえないため、店舗オープンの前日に急きょビニール袋(バイオマス30%の地球に優しい素材を使用)に変更しました。
お客さまのニーズに合わせた商品選びも欠かせません。 auミニッツストアの特徴として、コストコの商品をラインアップに入れています。コストコといえばケース売りなど販売単位が大きいことが特徴ですが、都心の一人暮らしの方にとってはなかなか買う機会がないかもしれません。そこでauミニッツストアでは、そうしたお客さまの声に応えるためにコストコ商品をバラ売りで用意しています。
お買い物以外の場面でもお客さまにワクワクをお届けできるよう、渋谷という立地を生かして、若い人たちに楽しんでいただけるような季節に絡めたキャンペーン施策も実施していきたいと思います。
店舗が実現するまでには、ロボットを活用するからこその苦労もあります。例えば商品のピッキングと袋詰めをロボットが担うため、素材や形状によってロボットが持ち上げられない商品がありますし、デリケートなものは袋に落とし入れる際に傷ついてしまうリスクがあります。こうした商品選定の制約がある中でなるべく多彩なラインアップをそろえるために、新しい商品が追加されるたびにロボットが正しく動作するか、どのくらいの高さから商品を袋に落下させるかなどの動作をROMSさんと一緒にチューニングしています。
auミニッツストアの体験価値を「au」に引き継ぎたい
9月13日に店舗がオープンしてからお客さまの反応はいかがでしたか?
テレビなどで取り上げていただいたので、ロボットを見にたくさんのお客さまが来店されました。ちょっとした小窓からロボットの動きが見えるようになっているので、立ち止まってロボットの動きを動画で撮影される方も多かったですね。
関連する業界の方からは、見学の依頼や技術を応用できないかといった商談が来ています。海外の企業からも同じような店舗を自国でつくれないかと相談を受けるなど、注目度の高さに驚いています。
今後の展望を教えてください。
店舗名に「au」が入っているように、無人店舗がお客さまの普段の生活の中で「au」というブランドをより身近に感じていただくきっかけになれたらと思っています。ロボット店舗に人が集まることで、そのまま隣のauショップに人が流れ、auのサービスに触れる人を増やせたら理想ですね。