技術・サービス

2024/09/30

終わりなき闘いに挑む!
「スマホがつながらない」を解消するKDDIの技術者たち

終わりなき闘いに挑む!<br />「スマホがつながらない」を解消するKDDIの技術者たち

「スマホがつながらない」と感じることはありませんか?これは、通信規格の移行期に発生しやすい「パケ止まり」が原因の可能性があります。
KDDIはお客さまの体感にこだわり、品質データの検知・分析・対策の活動をコツコツと積み重ね、ついに2023年度末、パケ止まり率の低さでauは国内キャリアNo.1になりました! その裏側ではどんな取り組みをしているのか、お客さまへ「つながる体験」をお届けするため、通信品質の向上に挑む担当者の皆さんにお話を伺いました。

目次

「パケ止まり」って何?

データパケットが何らかの原因で流れなくなり、データ通信ができなくなる状態。例えば、YouTubeの動画が止まったり、Instagramのストーリーが読みこめなくなったり、通信がつながりづらくなる状態。

どうして「パケ止まり」って起こるの?

原因はさまざま。電波が弱いことによる無線品質劣化や、基地局*で多くの人が通信し過ぎることによるアクセス集中、インターネットにつなぐ回線の容量不足など。

*基地局:移動する無線通信機の中継拠点として地上に固定的に設置された通信設備のこと

■インタビュイー略歴


阿部 大輔

阿部 大輔

コア技術統括本部 エリア企画室 通信品質強化グループ
島屋 早希

島屋 早希

コア技術統括本部 エリア企画室 通信品質強化グループ
渡部 泰成

渡部 泰成

コア技術統括本部 ノード技術本部 モバイルアクセス技術部 サービス検証2グループ

データと体感に乖離が!現地で確認、対策の実施を繰り返す

「パケ止まり」の改善に取り組んでこられた、これまでの経緯を教えてください。

阿部:エリア企画室(当時は品質管理部)では常にデータをチェックして、お客さまの体感品質が悪くなっていないかを適宜確認していました。しかし、2021年下期にエリア品質の改善対策をしている部門から山手線主要駅で「パケ止まり」が起きていると申告があり、急ぎ現地に駆け付けると確かにつながりづらかったんです。当時確認していた5G*端末のお客さまの体感品質データと、お客さまの体感に乖離があることが分かりました。現地のパケ止まりの原因は、5G基地局の電波が弱くなった際に4G*通信を活用するという機能が上手く動作しない不具合でしたが、その時私たちは基地局の異常に気付けていませんでした。

*5G:第5世代移動通信システム。高速・大容量に加え、多接続、低遅延を実現する。
*4G:第4世代移動通信システム。通信速度が高速化し、その特長を生かせるスマートフォンが普及した。

島屋:「山手線に乗っていてもスマホがつながりづらいことがある」と申告をいただいたことから、メーカーの異なるスマホを10台持って山手線に乗り込み、何周も測定を実施してお客さまの体感の確認と分析のためのデータを取得しました。品質把握のためには、データチェックだけではなく実際に測定する必要性を改めて感じ、そこから主要路線の現地調査と対策の検討が始まりました。

コア技術統括本部エリア企画室通信品質強化グループの島屋早希

▲コア技術統括本部エリア企画室通信品質強化グループの島屋早希。「山手線に何周も乗り、新幹線を何往復もしてお客さまの通信状況を確認しました」

品質の改善は「一夜にしてならず」

「パケ止まり」によるつながりにくさ解消のために具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか?

阿部:まずは社内でパケ止まり発生エリアを申告する仕組みを作り、それらを一つ一つ確認していきました。2022年度以降はお客さまの端末から得られるエリア品質情報送信機能によるビッグデータを活用しています。

データドリブンによる品質向上の仕組み

▲データドリブンによる品質向上の仕組み

島屋:2022年以降、東海道新幹線でもパケ止まりが発生しているというご申告をいただいたので、新幹線の測定と改善活動も開始しました。測定したログを分析することで、どこでパケ止まりが起きているのか?何が原因なのか?が判明し、品質改善のヒントが見つかります。

渡部:新幹線でのパケ止まりの原因を探ると、高速移動のため基地局の切り替えがうまくできていないことや、トンネル内ではそもそも電波が弱いことが分かりました。基地局側で接続に失敗してもすぐに再接続できるように、特別な対策を施しました。
品質向上のための対策はいろいろありますが、主なものに「容量最適化」と「基地局の機能改善」があります。
私たち通信事業者は、国から周波数利用の免許を交付いただき、その範囲の中で運用しています。利用できる周波数資源は4GLTE、5Gでそれぞれ限られているため、偏らないように配分するのですが、5G端末のご利用台数の増加やお客さまの利用状況により、状況は刻々と変化します。どの周波数を使えば、お客さまがより快適に利用できるかをチューニングすることが、「容量最適化」です。
「基地局の機能改善に変更」も重要な対策です。2020年に5Gサービスを開始してから4年が経ちました。その間にも無線機ベンダさまが、私たち開発部門の要件をもとに、より機能の高いソフトウェアをリリースしてくださっています。

新しい機能の導入にはリスクが伴うため、お客さまにご迷惑かけることのないよう検証をする必要があります。まず、私が所属しているモバイルアクセス技術部が、機能の仕様を正しく理解し、非商用のラボで検証した上でフィールドトライアルを行います。期待通りの効果を確認した後に、阿部さんと島屋さんが所属しているエリア企画室に引き継いで、全国に展開していきます。

阿部:エリア企画室では、全国展開の前にさらに段階を踏んで、慎重に新機能導入エリアを広げています。すべての基地局の条件が同じではないので、人の目で確認しながら数万局ある基地局の設定を変更していきます。

渡部:机上では「良くなるはず」と想定したものの、残念ながらうまくいかないこともありました。パケ止まりが改善しても、他の要素で不具合が出たこともあります。複合的に機能を導入し、課題にマッチしたチューニングを適用することが大切だと痛感しました。

コア技術統括本部ノード技術本部モバイルアクセス技術部サービス検証2グループの渡部泰成

▲コア技術統括本部ノード技術本部モバイルアクセス技術部サービス検証2グループの渡部泰成。「品質を守りつつ、新サービスを導入してお客さまにワクワクを届けたいです」

コア技術統括本部エリア企画室通信品質強化グループの阿部大輔

▲コア技術統括本部エリア企画室通信品質強化グループの阿部大輔。「最終目標はパケ止まりゼロです。コツコツ頑張ります」

地道な努力を続けることでさらなる高みを目指す

現在、パケ止まりの状況はどうなっていますか。

阿部:残念ながらまだエリアによってはパケ止まりが発生しています。「スマホがつながらない」エリアをなくし、最終的にはパケ止まりが全く起こらない「パケ止まりゼロ」を目指したいですね。

渡部:ここ数年で、大容量で通信できることのニーズは高まっています。私が入社する前は、電車で動画を見るという今では当たり前の光景もありませんでした。短いスパンでお客さまニーズとそれに伴う市場評価の変遷状況をしっかり把握し、常に一番になれるよう取り組みます。現在も20種類くらいの施策を同時並行で検証し、効果が出るものから順番に進めています。

最後に、通信品質改善業務への思いをお聞かせください。

阿部:2017年に入社して以来ずっと品質改善に取り組んでいますが。やるべきことはまだまだたくさんあります。日々刻々と変化する通信品質の内容や原因に向き合い、少しでもお客さまの体感が良くなることで「つながらないをなくす」ように改善を続けます。

島屋:私はパケ止まりが話題になった2021年に入社し、ずっとパケ止まりの改善に取り組んでいます。経験を積んで自分ができることも増え、自分が体感した通信品質に問題があればその原因を特定して、社内の関係者に声掛けをして、改善をやり遂げることができるようになりました。一人でも使いづらいと感じているお客さまを減らすために地道な改善を積み重ねていきます。

渡部:No.1になった今は、さらなる高みを目指したいと思います。開発部門の立場としては、いままでなかったような新しいサービスを世の中に打ち出し、お客さまにワクワクを提供し続けたいです。

auにおける5Gエリア情報や技術解説はコチラからご覧いただけます。

実は3人は同じ大学、同じ研究室の先輩後輩。どうりで業務のやり取りも息ピッタリ。フィールドトライアルのエリアは母校の近くで行いました

▲実は3人は同じ大学、同じ研究室の先輩後輩。どうりで業務のやり取りも息ピッタリ。フィールドトライアルのエリアは母校の近くで行いました

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