技術・サービス
2021/10/07
より安定した通信サービスを提供するために! 新監視センター開設プロジェクトを率いたリーダーたちの決意
7月15日、KDDIの新しい監視・運用センター「多摩第5ネットワークセンター(多摩第5NC)」がオープンしました。KDDIはこれまで監視拠点を新宿に置いていましたが、多摩第5NCは新宿の拠点に代わる形でさまざまな機能が追加された最先端のネットワークセンターになります。多摩第5NCの開設でKDDIのネットワークや設備の監視・運用がどう変わるのか。4年に渡ったプロジェクトにおいて、それぞれ重要なパートを任された4人のリーダーにプロジェクトのポイントをお聞きしました。
目次
新ネットワークセンターの特長
より安定した通信サービスの提供を目指して開設された多摩第5NCの特長は、「自動化」です。 通信ネットワークに不具合が発生した際に、発生箇所の特定から復旧方法までを自動で判断し、ワンタッチで復旧が可能となる運用自動化基盤を構築しました。これにより、迅速に精度の高い復旧作業を行うことができるようになります。また、自動化により、ほとんど人の手を介さない復旧作業を実現することができ、監視要員を大幅に減らせる見込みです。
多摩第5NCの監視室
新ネットワークセンターでの業務フローを検討
まだまだ進化の途上
目指すは世界に誇れる監視センター
KDDIエンジニアリング サービス運用本部 ネットワーク監視センター長
廣瀬 一也
多摩第5NCでの新しい監視スタイルを描き、それを実現するための業務フローを検討する業務設計ワーキンググループのリーダーを務める。
多摩に新しい監視センターをつくるうえで、運用品質を上げてお客さまに安定したサービスを届けるのはもちろんですが、私としてはぜひ実現したいことがありました。それは監視担当者の心理的負担を軽減することです。私自身、監視業務を5年ほど務めた経験があります。担当者は、常に緊張を強いられながら業務に臨んでいます。その負担を少しでも軽くしたいという思いで新たな業務のあり方を考えました。その最たるものが自動化です。これまでは障害が起きた際は担当者が逐一コマンドを入力していましたが、これからはワンクリックで対処できます。さらには黙っていてもシステムが対応してくれる「完全自動化」も一部で実現しました。
プロジェクトを進めていて難しいと感じたのは、皆が共通の認識を持つことです。ともすると「今までと同じやり方でいい」と考えるメンバーも少なくありませんでした。私が心掛けたのは、新しい監視スタイルへと変わることの必要性を丁寧に説明することでした。自動を実現すれば品質も上がるし、我々も楽ができる。手が空く分、これまでできなかった高付加価値の業務にも取り組める。だんだんと目指す姿が共有され、皆が意見を出してくれるようになり、それが新しい業務フローに採用されるとさらに乗り気になってくれる。少しずつ良い循環ができていくのを感じることができました。
私たちが目指すのは、このプロジェクトで得たものを外部へ発信していくことです。KDDI内だけでなく、監視運用の業務を請け負ってビジネスとして展開することもできるかもしれません。あらゆる業界から、そして競合からも「KDDIの監視はすごい」と思ってもらえるよう進化を続けていきます。
自動化の推進
働き方を変え、チャレンジし続ける
運用監視を実現
次世代自動化開発本部 プロセス統合推進部 内製開発グループ
笹川 隆
運用監視の「自動化」における可視化基盤のプロジェクトマネージャーを務める。
自動化システムは三つの基盤で構成されています。一つはサービス監視基盤。設備から上がってきた障害を検知・分析します。
次に可視化基盤。サービス監視基盤から上がってきた障害の情報を一覧表示します。3つ目が自動化基盤。障害をワンタッチオペレーションで、ときにはゼロタッチで復旧します。自動化は今回のプロジェクトの目玉となる取り組みです。目的は大きく二つ、「監視者の稼働削減」と「サービス復旧の迅速化」です。一連の流れを自動化することで監視者の負担を減らすことができます。復旧までの時間も短縮されるのでお客さまへのサービス向上にもつながります。
自動化プロジェクトが始まったのは2019年の冬です。当時私はまだメンバーに加わっていませんでしたが、なかなか要件が決まらず進行にも時間がかかっていて、難しい案件であることが見て取れました。昨年2月にプロジェクトマネージャーに任命されたときには「大変なことになった」と思いました(笑)。パートナー含めて50人以上が関わる規模の大きいプロジェクトですし、プレッシャーはものすごく大きかったですね。システムをリリースして、とりあえず軌道に乗せることができたという安心感はありますが、まだまだこれからだと思っています。
多摩第5NCの監視環境の構築
新宿を止めることなく多摩へ
最強の監視環境を作り上げるために
KDDIエンジニアリング サービス運用本部 サポートセンター
岡村 信幸
多摩第5NCの新しい監視環境の構築を担当。新宿ネットワークセンターからの設備の移設、新設備の導入を務める。
新宿NCにはモバイル系や固定系など、さまざまな監視網が引いてあり、それらを多摩第5NCに移設しました。新宿の拠点では4つに分かれていた監視センターが多摩ではワンフロアに集約されるので、スペースは限られます。加えて、自動化を前提とした業務フローになるので、それも踏まえながら設備を移設したり、新たなものを検討・設置したりしました。
私たちの至上命題が「監視を止めない」ことです。新宿で監視を続けながら、多摩に新たな環境を作らなければなりません。ルーターやサーバーなどの設備を移設する際も、同じものが二つあるなら一つを止めて多摩へ運べばよいのですが、一つしかないものの場合は代替となるものを他のNCから探したり、新たに開発し直したり。長く使われている監視網の場合、作ったのが誰なのか分からなくなっている場合もありました。少しでも情報を持っている人を探し出して移設の方法を一緒に考えていただいたりしています。
イチから新しい監視センターを立ち上げるのは会社としても20〜30年に一度のことでしょう。KDDIの歴史に残るプロジェクトに携われたのは本当にうれしいですね。移転にあたり、過去に構築されたものを掘り出し、洗い出して改めて作り直す、というフローを経験したことで、KDDI監視ネットワークに関する理解を深められたことも自分の幅を広げることにつながりました。
新システムで故障対応を改善
スピーディーな情報共有で
現地出動にかかる時間を短縮
技術統括本部
エンジニアリング推進本部 運用管理部 運用DX推進グループ
鈴木 久仁
ユーザーからヒアリングした内容をもとにシステムの仕様を決め、開発側との調整役を務める。
現地対応ワーキンググループでは、au基地局やお客さまの自宅での現地対応のDX化に取り組んでいます。本プロジェクトでは故障対応を対象に、関係者が必要な情報をより簡単に入手できるシステムを導入しました。
故障対応は以下の流れで進みます。
- ネットワークセンターにて障害を検知(アラーム発生)
- 現地出動の準備・依頼
- パートナー企業の担当者が現地に行って故障対応
現地対応では、事前に基地局の過去の運用状況などさまざまな情報が必要になります。従来は、出動の準備・依頼をする方が複数のデータベースで情報を検索し集めてくる必要がありましたが、その作業が担当者の負担になっていました。今回私たちが目指したのは、現地対応の手順①〜③を一気通貫できる仕組みを作り、より迅速な復旧を実現することです。具体的には、必要な情報が1ヵ所に集約されるシステムを作りました。キーワードを入力すると複数のデータベースから情報を過不足なく集めてくれるため、情報に辿り着くまでの時間や依頼にかかる時間が大きく短縮されました。
「長く使えるシステム」を作るには、ユーザー側と開発側がお互いに納得して進めることが大切です。そのため、開発側にシステムの要件定義を伝えるときは「現場の担当者はこんな思いで対応している」「ここを見て、こういうところを意識している」など、ユーザーの状況を理解してもらえるように心掛けました。そうすることで、開発側も「だったらこういう仕様もありじゃないですか?」と意見を出してくれます。そうしたやり取りの中で「これとこれは一緒にできそう」「これはなくても成り立つかも」と、システム全体を見直しました。
自動化を止めることなく動かすためには使用するデータの精度が大切で、データを正しく、美しく維持する地道な作業も重要となります。こうした手作業を一つ一つ積み重ねた先に「DX」があります。簡単なことではありませんが、いずれは人の手を介さずに最短で復旧を実現できる「スマートな運用」を目指し、今後も進化していきたいと思います。