技術・サービス

2022/06/14

人流データ活用で交通事故が減少!
KDDI Location Analyzerが開く無限の可能性

人流データ活用で交通事故が減少!<br> KDDI Location Analyzerが開く無限の可能性

新型コロナウイルスの感染拡大でホットワードとなった「人流」。「人はどのように行動し、どのように変化するのか?」。その答えをKDDIは「KDDI Location Analyzer」(以下KLA)を用いて導き出しています。KLAは、携帯電話端末のGPS位置情報から利用者のデータを取得し、人流データとして活用するサービスです。昨年、愛知県警さまではこのKLAを導入し人流データを活用した交通事故抑止対策を推進するなど注目を集めました。さまざまな社会課題の解決へとその利用用途が広がるKLAの可能性について、担当者に話を聞きました。

目次

■インタビュイー略歴


吉村

吉村 智史

パーソナル事業本部 サービス統括本部 データマネジメント部 ビジネス開発グループ
田崎

田崎 良太

パーソナル事業本部 マーケティング本部 パートナービジネス推進部 営業企画グループ

「人流」データに注目集まる!

「人流」データに注目集まる!

KDDI Location Analyze(KLA)について教えてください

吉村:KLAは、地図上の好きな場所を設定し、その場所の人流を簡単な操作で分析することができるWebサービスです。これまで店舗の新規出店などマーケティングに活用される商圏分析では、5年に一度実施される国勢調査のデータが使われていましたが、鮮度が古く、実体を正確に捉えられないという課題がありました。そこでスマートフォンから取得するフレッシュなGPSデータを活用することはできないか、という着想から開発が始まりました。活用例としては、小売や飲食、サービス業の出店戦略、不動産・デベロッパーの競合分析など多岐に渡ります。

田崎:今では自治体にも数多く導入されており、街づくりや地方創生・活性化に利用されています。駅前の再開発によりどれくらい人の流れが変わったのかBefore-Afterを可視化する、といった使い方です。

吉村:このような人流データを活用したサービスは他社にもありますが、日本全国のデータを見られること、直近から2年3ヶ月前までと長期間のデータを参照できることなど、KLAには他のサービスにはない特長があります。

田崎:他社のサービスは設定が難しく、有効なデータを取り出せなかったりすることがありますが、KLAは操作が簡単で、どなたでも素早く活用することができます。

KDDIが人流データを活用したサービスを開始したのはいつからですか

吉村:きっかけは東日本大震災です。当時は帰宅困難者の滞留人口データをニュースで目にされた方もいらっしゃると思います。「人の流れを把握したい」というニーズがあり、人流データを自治体に提供することから始まりました。当時はまだスマートフォンが普及しておらずデータ量は少なかったのですが、普及が進むにつれて活用方法も広がっていきました。今回の新型コロナウイルスも同様で、従来では想定できなかったことが起き、人の流れが変わるタイミングが、人流データの活用が広がるきっかけになっています。

また、位置情報の取得を許諾される一般ユーザーが増えていることも人流データの活用が進んだ背景にあると思います。自分のデータを提供することが社会の役に立つ、という意識をお持ちの方が増えているようです。

田崎:新型コロナウイルスの感染症対策に活用していただくことを目的に、2020年と2021年の一定の期間にKLAを全国の地方自治体に無償提供しました。これが自治体の方々にKLAを認識していただくきっかけになっています。

「KDDI Location Analyzer」でこんなことができる!

通行人口分析

エリア内の交通量を平日・休日、時間帯別、性・年代別、交通手段(自動車、徒歩)別に道路ごとに集計。道路単位で交通量を可視化ができます。

通行人口分析

単点分析ダッシュボード

任意に設定した店舗や施設への来訪者の情報を「曜日別来訪者傾向」や「リピーター率と内訳」、「時系列推移」などの観点で分析、表示できます。

単点分析ダッシュボード

時系列来訪者比較分析

設定した地点への来訪者の性・年代や居住/勤務/来街別といった属性を曜日別・時間帯別に把握したり、来訪者数の推移を時系列で比較分析できます。

時系列来訪者比較分析

人流データを生かして対策を強化

人流データを生かして対策を強化

愛知県警さまでの活用事例について教えてください

田崎:2019年の冬に、当社の中部総支社が愛知県警さまにKLAをご紹介したことに始まります。愛知県は交通事故が多く、特に交通事故死亡率では全国ワースト3以内の常連でした。なんとかしたい、という思いからKLAに注目されました。

交通事故で亡くなられた方の内訳を見ると、高齢者が多いことが分かっています。そこでKLAを使って高齢者が多く行き来する場所・時間帯を特定し、それに合わせてパトロール強化などの対策が効率的に打たれました。2016年から2020年にかけては毎年17〜20人で推移していた横断歩道を横断中の高齢者の死者数が、2021年は6人へと大きく減少しています。

このように活用していただき成果が上がっていることについて、どのように思われましたか

田崎:こんなに減ったのか!と正直驚きました。この件は新聞やテレビなど愛知県内のメディアにも大きく取り上げられましたし、県警の方々も効果を実感してくださっているようです。自治体さまのEBPM(Evidence-based Policy Making::証拠に基づく政策立案)やDX推進に寄与することで社会貢献につながり、お役に立てることは大変うれしく思っています。

吉村:その後、他県の警察関係者さまからもたくさんの問い合わせをいただいています。サービス開始当初は民間企業のマーケティングツールとしての使われ方が主だろうと私たちは思っていました。

しかし今回の愛知県警さまの事例を通して、特定の属性の人を捕まえてそれに対してアクションを取る、という使い方もできることが分かったのは大きな発見でした。しかも人の命を救うことに貢献できるなんて、本当に誇らしいことです。

「高齢者の通行量や動態を把握して交通事故抑止対策に活用」

愛知県 警察本部 交通部 交通総務課

愛知県は全国的にも交通事故の件数が多く、県警では交通事故の削減が課題でした。従来から独自の交通事故分析システムを活用し、過去交通事故が多発した場所や国勢調査による高齢者の居住実態などを踏まえた交通事故抑止対策を推進してきましたが、より人流を正確に分析して対策に生かすことを目的に、2021年4月から新たにKLAを導入しました。

全国の都道府県警としては初めて位置情報ビッグデータを活用し、人や車の交通量を地図上に可視化させ、過去の交通事故発生状況とクロス分析することで、より具体的な危険箇所などを割り出し、効果的な交通事故抑止対策につなげています。

特に交通事故死者の多くを占める高齢者が、どのエリアにどの時間帯に多く集まるのかを分析することで、効果的な街頭啓発活動の推進が可能になりました。

愛知県管内各エリアにおける高齢者の通行量を把握

交通事故死者の約半数以上を高齢者が占めることから、通行人口分析を用いて高齢者対策の強化が必要なエリアを選定。具体的な危険箇所を割り出し、街頭活動などさまざまな対策を実施

▲交通事故死者の約半数以上を高齢者が占めることから、通行人口分析を用いて高齢者対策の強化が必要なエリアを選定。具体的な危険箇所を割り出し、街頭活動などさまざまな対策を実施

愛知県管内各エリアにおける高齢者の動態を把握

KLAの「来訪者属性分析」で、高齢者が多く集まる施設や時間帯を割り出して効率的に対策

▲KLAの「来訪者属性分析」で、高齢者が多く集まる施設や時間帯を割り出して効率的に対策

可能性は無限大!これからの進化に期待

今後の展望を教えてください

吉村:コロナ禍において人流データが注目されるようになり、ますます活用は進んでいくでしょう。これからは勘や経験による判断ではなく、データに基づいた意思決定がより重視されるようになるはずです。

例えば、筑波大学・つくば市さまとのHack My Tsukubaでは、市民が参加し、地域の課題を考えるというワークショップを開催していますが、ここでもKDDIの人流データを活用していただいています。他の地域でも、5〜10年先を見据えた街づくりの基礎データとしての活用が進むと考えています。KLAを自治体・民間企業に広く活用していただき、SDGsの「住み続けられる街づくり」の実現につなげていただけたら大変うれしいです。

田崎:今後MaaS(Mobility as a Service:次世代の交通サービス)やスマートシティ構想において人流データは必須のものになるでしょう。KLAの活用領域はどんどん広がり、今後は位置情報と「何を組み合わせるか」がポイントになると考えます。お客さまである企業や自治体が持つデータとの組み合わせによって新しい価値を生み出す、ソリューションの提案が求められるようになるはずです。これまではKLAというサービスツールを売ることに力を入れていましたが、ツールを提供したら終わり、ではなく、「お客さまが位置データでどんな課題を解決されたいのか」を深く知ることが大切であり、お客さまと共に解決方法を考えさせていただきたいと思います。

KLAは私たち通信キャリアの強みを生かせるサービスです。KDDIが持つデータやサービスが社会貢献の一助となるのであればすばらしいことですし、私たちにとっても大きなやりがいになります。

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