カルチャー

2023/01/23

eスポーツレーサーから夢のプロカーレーサーへ。auの「ブレインテック」が切り拓く、夢を諦めない世界

eスポーツレーサーから夢のプロカーレーサーへ。auの「ブレインテック」が切り拓く、夢を諦めない世界

夢があっても、様々な要因によって諦めなければならない人がいる。

プロのカーレーサーは、目指すには高い障壁があり、諦める人が多い夢のひとつだ。そんなプロレーサーへの夢を、画期的なアプローチで支援するプロジェクトをauが発表した。

プロジェクトは、脳の認知能力を高めるトレーニング技術を提供することで、eスポーツレーサーのドライビングテクニック向上を目指す。現在は実証実験をおこなっている段階だが、いずれは、eスポーツレーサーからプロのカーレーサーを目指せる環境をつくることも視野に入れている。
壮大な構想に思えるが、本当に実現可能なのだろうか?プロジェクトマネージャーの伊藤悟さんと、プロジェクトに参加したeスポーツレーサーの佐々木唯人選手に話を聞いた。

目次

■インタビュイー略歴


伊藤

伊藤 悟

事業創造本部 XR推進部 サービス・プロダクト企画2グループ
グループリーダー
佐々木選手

佐々木 唯人選手

eスポーツレーサー。JEGT認定ドライバー。2019年の茨城国体では東京都1位を獲得。

幼い頃からモーターレースに出ることが夢。しかし……

幼い頃からモーターレースに出ることが夢。しかし……

そもそもなぜauがeスポーツやモータースポーツのプロジェクトを?

伊藤:実は、auは以前からモータースポーツのスポンサー活動を続けているんです。また、eスポーツでもプロチームに協賛するなどして支援をしてきました。業界には繋がりがあったんです。

そんな中、ある自動車メーカーさんから「若者の車離れが進む一方で、良い車を開発するにはモータースポーツの厳しい舞台で車をテストしないといけない」という話を聞いた。そこから僕らの「ブレインテック」で、eスポーツレーサーをプロのレーサーに育てることで、自動車業界の課題解決にもつなげられないかと考えたのがきっかけでした。

ブレインテックは、脳科学とIT技術を組み合わせたもので、auを運営するKDDIが研究開発を進めています。これまで、サウナと脳波の関係を研究するなど、さまざまな領域とかけ合わせた取り組みをしてきました。

プロのレーサーになる人を増やせないかというのがスタートだったんですね。

伊藤:レーサーになるのは、他のスポーツと比べてかなりハードルが高いんです。まず車を買って、さらに毎週末サーキットで走行料金を払ってトレーニングするという金銭的負担がすごく大きいスポーツなんです。

佐々木:私も幼い頃からカーレースに出ることが夢だったのですが、やはりハードルが高く挑戦できませんでした。そこで、レースを疑似体験できないかと中学生の時にゲームを買ったのがeスポーツを始めたきっかけでした。

伊藤:実は私も中学時代にカート屋さんに行ったのですが、一般家庭ではカートを走らせ続けられないと購入を断念した過去があります。でも、そんな人たちにも走るチャンスがあったら本当は速いかもしれないし、F1に行けるかもしれない。環境要因でプロレーサーの夢を諦めなきゃいけない人を何とか応援できないか。それがこのプロジェクトのコンセプトになりました。

ブレインテックで、別のアプローチからレーサーの道をつくることで、挑戦する人を増やす。それによって、モータースポーツを持続可能な形で発展させられる可能性もあると思っています。

幼い頃からモーターレースに出ることが夢。しかし……

0.5秒ベストタイムを更新。意外なトレーニング内容とは?

0.5秒ベストタイムを更新。意外なトレーニング内容とは?

佐々木選手は実際にブレインテックを使ったトレーニングを体験されましたが、いかがでしたか?

佐々木:機械を首に巻いて、パソコンを使うトレーニングで、アニメとか漫画みたいだなと思いました(笑)。

普段のトレーニングは、たくさんゲームをやりこむのが基本です。しかし、今回はゲームを使わず、脳波を測りながらトレーニングするという全く違うアプローチでした。これで、他の人と差をつけられたら面白いなと思いました。

どんなトレーニングが印象に残っていますか?

佐々木:色が変わる球体が画面に表示されて、赤色以外の時にボタンを押すトレーニングがありました。それをずっと続けるんですが、目も疲れてきて、イライラしてきて、さらに間違いも増えて……忍耐力がついたかもしれないです(笑)。

伊藤:そのテストは、正答率が高いけど反応速度が遅い人や、間違いが多いけど速い人などのパターンが出てくるんですが、佐々木さんは慎重派だったんだよね。トレーニングについている脳科学の先生が「間違ってもいいから押していこう」ってハッパかけながらやっていました。

効果はいかがでしたか?

佐々木:1ヶ月間のトレーニングで、ベストタイムを0.5秒ほど縮めました。

0.5秒はすごいですね。

伊藤:コンマ何秒を削るためにみなさん血眼になっている世界なので、すごい結果だと思います。プロジェクトに参加してくれた宮園拓真選手も約0.7秒タイムを縮めました。彼はグランツーリスモというゲームの世界チャンピオンなので、伸びしろはほとんどないはずなんですが……。トレーニングをせずに同じ条件で計測した人はタイムが変わらなかったので、やはり効果があったと考えています。

ドライビングシュミレーターに乗る佐々木選手

▲ドライビングシュミレーターに乗る佐々木選手

eスポーツからリアルへの夢が叶えられようとしている

eスポーツからリアルへの夢が叶えられようとしている

このプロジェクトは、いずれeスポーツレーサーからリアルレーサーへ挑戦する人を増やすことも視野に入れています。これは可能なのでしょうか?

伊藤:まだ少ないですが、実際にeスポーツレーサーからリアルレーサーになる人も誕生しています。リアルレースに挑戦して1年目で表彰台に乗る人もいますね。

佐々木:今のゲームは進化していて、リアルなレースにとても近いと思います。eスポーツの選手の中には、実際の自動車の技術書を読んで勉強をしている人もいるくらいです。 僕も先日、レーシングカーに初めて乗る機会があったんですが、ゲームにすごく似ている部分がありました。

レーシングカーに乗られたんですね!それもこのプロジェクトの繋がりでしょうか?

伊藤:そうですね。佐々木さんは、とにかく車に乗っていたくてピザ屋の配達バイトしているくらい車好きで、「死ぬまでに一度でいいからレーシングカー乗ってみたいです」って言ってたんですね。そこでauがスポンサーをしているレーシングチームがレーシングカーの体験会をしているんですが、「枠が空いているから、プロジェクトの人で乗りたい人いないか」と言われて、佐々木さんに乗ってもらいました。

佐々木:本当に夢のような時間でした。テレビでしか見られない遠い世界のものに実際乗れた。そのぐらい壮大なことでした。
でも、感覚はゲームとすごく似ていて驚きました。そんな簡単に運転できるものじゃないと思うのですが、トラブルもなく安全運転できていたと思います。

伊藤:佐々木さんは、本当は実車でレースに出たかったかもしれないけど、環境的に制約がある中で、eスポーツレースに打ち込んできたわけですよね。そんな人が頑張ってきてよかったと思える環境をつくりたいです。

佐々木選手は今後リアルレースにも挑戦していきたいですか?

佐々木:実は、auさんに色々機会をいただいたおかげで、ヤリスという車のレースに参加してみませんかというお声がけがあって。今年ぜひ出たいなと思っています(注1)。

幼少期からの夢が、本当に叶うところまできたんですね。

佐々木:今後は、実際のレースに出ることも目標に頑張りたいと思っています。このプロジェクトを通じて、ゲームのテクニックが向上するだけではなくて、リアルのレースへの選択肢が実際に広がりました。とても嬉しいです。

注1) 本取材は22年6月実施。その後ヤリスのレースに出場。

ブレインテックで、夢に挑戦できる社会へ

ブレインテックで、夢に挑戦できる社会へ

ブレインテックは今後どう生かされていくのでしょうか?

伊藤:今回はモータースポーツでしたが、他のスポーツや、ものづくりにも展開できる可能性があると思っています。例えば、伝統芸能や工芸など後継者不足に悩んでいる業界では、後継者の育成期間を短縮できるかもしれない。
あとは、ブレインテックによって、向いていない仕事についてしまっても別の仕事に転向できたり、諦めていた夢にもう1回挑戦してみたりする機会が与えられるかもしれない。そうすると、より生きやすい世の中になるんじゃないかと思うので、引き続き色々な業界にアンテナを張っていきたいです。

◇◇◇

環境要因で諦めていたプロレーサーの夢を、佐々木選手が叶えようとしているように、技術や機会を活かすことで夢への障壁をクリアできる未来が訪れるかもしれない。

auはこれからもみんなが夢に挑戦できる世界を目指し、様々な課題を解決していく。

写真提供:KOHEI HARA
記事提供:ハフポスト日本版

■「#みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト」

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