カルチャー

2023/07/21

テレハウスヨーロッパ高室社長に聞く「キャリアのつくり方」

テレハウスヨーロッパ高室社長に聞く「キャリアのつくり方」

自分はどんなキャリアパスを歩んでいくべきなのか。先輩たちはどうやってキャリアをつくっているのだろう?こうした悩みを抱えて「キャリア迷子」になっている方もいるかもしれません。今回はロンドンに拠点を構えるTelehouse International Corporation of Europe Ltd.(注)(以下、テレハウスヨーロッパ)の高室社長にインタビューしました。グローバルに活躍されている高室さんのキャリア体験談には、たくさんのヒントが詰まっています。

(注)KDDIグループは「TELEHOUSE」ブランドとして世界10カ国以上でデータセンター事業を展開しています。

目次

■インタビュイー略歴


高室 貴代

高室 貴代

Telehouse International Corporation of Europe Ltd.
Managing Director

外資系企業への営業をきっかけに、目線の先は海外へ

テレハウスヨーロッパの事業内容と、高室さんの役割を教えてください。

TELEHOUSE LONDON DOCKLAND NORTH2にあるデータセンターエリア

▲TELEHOUSE LONDON DOCKLAND NORTH2にあるデータセンターエリア

テレハウスヨーロッパは、イギリス・フランス・ドイツの3拠点でデータセンター事業を展開しています。1990年にイギリスで事業を開始して以来、30年以上にわたり多くの通信事業者、インターネットサービスプロバイダー、クラウド事業者などヨーロッパのインターネットハブとしての機能を果たしています。

私はテレハウスヨーロッパの経営者として事業運営、拠点間の連携や横展開などの役割を担っています。

TELEHOUSE LONDON Docklands North Twoの外観

▲TELEHOUSE LONDON Docklands North Twoの外観

ご自身のキャリアパスについて教えてください。現在に至るまで、KDDIでどのようなご経験をされましたか?

長らく営業畑を歩んできました。私が入社した当時、法人営業部門はお客さまの業態ではなく、エリアごとに担当が分かれていました。そこで約2年間エリア営業に従事した後、外資系企業の担当になりました。

ここでは外資系企業の特性に触れたり、海外を含めた通信事業者の勢力図をインプットしたり、海外から日本がどのような市場に見られているのか、理解を深める機会にもなりました。外資系企業の場合、決裁者が海外にいることが多くあります。そのため営業活動の中で自然と海外に目が向くようになり、この経験が一つの転換点になったように思います。

そして6年後、33歳のときに初めて海外赴任を経験しました。赴任先はテレハウスヨーロッパのセールス部門です。3年間にわたり現地スタッフと一緒に働く中で、国による視点や考え方の違いに関心が芽生えました。この頃には「異文化の中で仕事をしたい」という思いがキャリアの軸になっていました。

目の前の仕事に真剣に取り組んでいたら、点がつながり線が見えてきた

帰国後は、どちらに配属になったのでしょうか。

日系大手商社の営業担当でした。国際ネットワークの構築などで海外とやり取りする機会はありましたが、それでも、日本人による日本人のためのサポートという色合いの強い仕事。正直に言うと、ここに来て日系……?という思いはありました。

ただ、今振り返ってみると日系企業を担当した3年間は、その後のキャリアに欠かせないものでした。日系の大手企業が何を考えているのか、KDDIにどのような期待を寄せているかといった肌感覚を得られたからです。

私はこれまで営業部門を中心に歩んできましたが、2020年に一度現場から離れ、ソリューション事業本部長(役員)の上席役員補佐を経験しています。役員補佐業務では、直属の上司となるソリューション事業本部長が出席されるほぼ全ての会議に同席。全社の経営課題に関することや、ソリューション事業部内の課題や論点に対する深い理解が求められます。その当時、KDDI法人ビジネスのお客さまの大多数を占める日系大手企業への理解があったことがとても役に立ちました。過去の仕事が今につながっていると実感した瞬間です。

日系企業を担当したことで得られたものは他にもありますか。

社内の人脈が一気に広がりました。KDDIにおいて日系の大手企業は、営業部門では「お客さま」という立ち位置でありながら、別の部署からすると、事業やサービスを一緒に行う「パートナー」の関係性だったりします。社内のあちこちで同じ企業とさまざまな形のお付き合いがあるからこそ、お客さまを起点に他部署の方と話す機会が増えました。社内のたくさんの人と接点を持てたのは、日系企業を担当したからこそ得られた財産の一つです。

スティーブ・ジョブズさんの有名なスピーチに、「Connect the dots(点と点をつなげる)」という言葉があります。──これまでのいろいろな経験(点)が一本の線になり、思いもよらなかったところで役に立つ。私も時には「これが本当に自分のやりたいことなのだろうか?」と悩むこともありましたが、今振り返ってみると、まさに全ての点がつながっていると感じます。

反対に、これまでを振り返って「無駄だった」と感じる時期があるのなら、それは自分が本気で向き合っていなかったからだと思います。真剣に取り組むからこそ一つの仕事から得られるものが増えていきますし、そこで蓄えたことは自分の血肉になり、次のステップで生かされます。自分が取り組むあらゆる仕事は、一本の線でつながっている。そう考えると、無駄な経験は一つもないと思います。

新しい価値観に出会い、成長していく

2023年5月に実施した全社のキックオフミーティングの様子。他部署のスタッフ同士でテーブルを囲むことで、部門を越えたコミュニケーションが生まれました

▲2023年5月に実施した全社のキックオフミーティングの様子。他部署のスタッフ同士でテーブルを囲むことで、部門を越えたコミュニケーションが生まれました

グローバルな環境で働くことについて、どのように感じていますか?

テレハウスヨーロッパにはさまざまなバックボーンを持った人が集まっており、時には「え?なんでそうなるの?」と驚くこともたくさんあります。

ただ、自分と違う価値観に出会っても、それを一度受け止めることが重要だと思います。なぜならその裏には彼らなりのロジックや理由があって、その背景に触れる過程で気づかされることがあり、自分が物事を見るときの幅が広がっていくからです。これが海外で働く醍醐味の一つではないでしょうか。

仕事でご一緒したキャリアビジネス アジアパックの通信事業者の皆さんと

▲仕事でご一緒したキャリアビジネス アジアパックの通信事業者の皆さんと

最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

自分は一体何のスキルを磨くべきなのか、将来どこに進んでいけばいいのか。こうしたモヤモヤを抱えている方も多いかもしれません。自分に向き合うことは簡単ではありませんし、私自身もすぐに答えを見つけることはできませんでした。ただ、まずは目の前の仕事を一生懸命やっていれば、そこで身につけたことから次の道が拓かれていくはずです。

また、もう一つお伝えすることがあるとすれば、”Stepping out of your comfort zone”というのも必要だと思います。時間は皆さんが思うより早く平等に流れていきます。その限られた時間の中で、自分が慣れ親しんだ場所から一歩踏み出す勇気も時には必要だと思います。

最初の海外赴任が決まった時、昔の上司から「何か起こる方と、今と同じ方の二つの選択肢がある場合、何か起こる方を選んだほうが人生は面白い」と言われたことを今でも覚えています。自分なりの選択も将来きっと「つながっていく」と思います。そのつながりがより良き方向に向くように、前向きに歩んでいきましょう。

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