カルチャー

2023/11/24

浜田敬子さんに聞く。自分らしいキャリアの重ね方、これからの組織に必要なもの【後編】

浜田敬子さんに聞く。自分らしいキャリアの重ね方、これからの組織に必要なもの【後編】

ジャーナリスト 浜田敬子さん、KDDI 人事企画部 内海かなめさん、モデレーター 遠藤祐子さんが登壇した、社内向けオンライントークイベントの後編です。DE&I実現に向けて変わろうとする企業の取り組みとは?

■前編はこちら

目次

■インタビュイー略歴


浜田 敬子

浜田 敬子

1989年に朝日新聞社に入社。
1999年からAERA編集部に所属し、副編集長などを経て、2014年からAERA編集長に。2017年に朝日新聞社を退社後、経済オンラインメディアBusiness Insiderの日本版を統括編集長として立ち上げる。2020年末からはフリーのジャーナリストとして活躍。ダイバーシティや働き方についての講演も多く、近著に『男性中心企業の終焉』(文春新書)がある。
内海 かなめ

内海 かなめ

KDDI 人事企画部 副部長
1994年入社。人事部、社長付補佐、カスタマーサービス推進部などを経験。2020年4月より人事企画部D&I推進室長。2021年4月より人事企画部副部長 DE&I推進担当。
KDDIにおける、課長職の女性の出産・育児休職取得事例の第1号。
遠藤 祐子

遠藤 祐子
(モデレーター)

一般社団法人MASHINGUP理事(代表)、MASHINGUP編集長
2012年株式会社メディアジーンに入社。2015年より同社執行役員。2019年よりダイバーシティ&インクルージョンを考えるメディア『MASHING UP』の編集長として制作・運営に携わる。2022年より一般社団法人MASHING UP 理事。

「好意的差別」をなくし、女性にもチャンスを!

「好意的差別」をなくし、女性にもチャンスを!

遠藤 :育児休暇から復帰した女性社員への対応で大切なことは何でしょうか?

浜田 :21世紀職業財団の報告書では、「脱マミートラック」した人は何がきっかけだったのか?という調査もありました。

一つは、短時間勤務をフルタイムに戻したことです。リモートワークが活用できれば、週5日すべて短時間勤務を取らなくてもいい人もいるでしょう。週に3日だけでも定時まで働けるようにする。フルタイムで働くことがより重要な仕事を任せられることにもなり、自信を取り戻せるのです。

もう一つは、上司とのコミュニケーションです。調査では「上司に自分から働きかけた」「上司からの働きかけがあった」と答えている人も多いです。たとえば上司が、「君には能力があるからもっとこういう仕事をやってみませんか」と働きかける。互いの意思が確認できて、仕事を任せてもらえれば、女性はとても生産性高く働きます。上司が期待することはとても大切です。

内海 :出産後に復帰する際、「フルタイムで働きます」と言った女性に、上司が良かれと思って「最初は短時間勤務でなくて大丈夫?」と言ったというケースも聞いたことがあります。

浜田 :それは「好意的差別」ですね。良かれと思っての配慮が女性から機会を奪ってしまうのです。女性は「外された、私にはもう大きな仕事は来ない」と自信を失います。まずは、チャンスをあげてほしいです。

内海 :女性社員の方々と話していると、「成長したい!」という意欲をとても感じます。短時間勤務など時間的な制約があってもその点は変わらないので、ぜひ、その意欲を持ち続けられるように、組織として支援していきたいと思います。

遠藤 :無理強いしてはいけないけれど、親切心で忖度するのも機会を奪ってしまうということですね。

誰もが少数派になりえることに気付く、アンコンシャス・バイアス研修

誰もが少数派になりえることに気付く、アンコンシャス・バイアス研修

遠藤 :内海さんから以前、「KDDIという組織は実力主義であり、男女平等であるという意見が社内的にも多い」とお聞きしました。

内海 :確かに人事制度などでは実力主義であり、男女平等になっていると思いますが、「アンコンシャス・バイアス(※)」はまだまだあると思います。

※アンコンシャス・バイアス:無意識の偏見や思い込みから偏った見方をしてしまうこと。

遠藤 :「無意識の偏見」ですね。何か取り組みを始めているのですか?

内海 :KDDIではエクイティ施策の一つとして、「アンコンシャス・バイアス研修」を昨年度からスタートしました。本部長層から始め、今年度下期からは部長や課長といった経営基幹職への研修を実施しています。

本部長研修では、「自分たちもアンコンシャス・バイアスを持っているかもしれない。相手に辛い思いをさせているかもしれないことに気付いた」という声が多くあがりました。誰でも少数派になる場面はある、ということを共有できたのはすごく良かったと思います。

遠藤 :リーダーを務める方々も、研修を通じて「弱者の体験があったこと」に気付く。誰もがマイノリティになる可能性がある。だからこそ、エクイティは男女を問わず誰にとっても大切なことですね。

DE&Iの推進で、男性にとっても働きやすい職場へ

DE&Iの推進で、男性にとっても働きやすい職場へ

内海 :本日のトークイベントは、まず第一歩として、女性がテーマでしたが、決して女性だけの話ではありません。女性が働きやすい職場や環境が実現することは、きっと男性にとっても自分の良さが発揮できる働きやすい環境になると思っています。

浜田 :DE&Iの推進によって、企業の採用力も高まると思います。若い世代や中途で入ってくる方々の中には「DE&Iが進んでいる企業で働きたい」と感じている方もいます。

それと、投資家の方々も「女性管理職比率の高さは、企業の構造改革が進んでいる象徴であり、時代に合わせて変わっていこうとする意欲の表れである」とおっしゃっていました。構造改革が進むことは、意思決定にも影響を及ぼします。

遠藤 :ありがとうございます。最後にお二人からKDDIのみなさんにメッセージをお願いします。

浜田 :KDDIは制度的に整っている部分も多くあると思います。せっかく良い制度があっても使わないと意味がありません。そして、女性だけが使う時代でもありません。みんなが働きやすい土壌を整える上で、男性の働き方や意識を変えることは非常に大事です。女性だけでなく、みなさんでDE&Iを進めていっていただけたらと思います。本日はありがとうございました。

内海 :本日は、浜田さん、遠藤さんからたくさんのヒントや刺激のあるお話をいただきました。KDDIではDE&Iの浸透に向けて、「なりたい私がKDDIにいる」というキャッチコピーを作りました。

「社員一人ひとりが描くなりたい姿、それを実現できる環境がKDDIにはある」と社員の皆さんが思えるような会社になっていけば良いと感じています。今日の学びも参考に、人事本部としてもさまざまな取り組みを進めていきたいと思います。本日はありがとうございました。

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