カルチャー
2023/10/25
浜田敬子さんに聞く。自分らしいキャリアの重ね方、これからの組織に必要なもの【前編】
KDDIでは、サステナビリティ目標の一つとして女性活躍推進を掲げています。推進を加速する活動の一環として、ジャーナリストの浜田敬子さんを招いた社内向けオンライントークイベントを開催。女性の働き方をテーマに取材を重ね、ご自身も仕事を続けながら子育てをした経験を持つ浜田さんとのディスカッションをご紹介します。
目次
■インタビュイー略歴
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浜田 敬子
- 1989年に朝日新聞社に入社。
1999年からAERA編集部に所属し、副編集長などを経て、2014年からAERA編集長に。2017年に朝日新聞社を退社後、経済オンラインメディアBusiness Insiderの日本版を統括編集長として立ち上げる。2020年末からはフリーのジャーナリストとして活躍。ダイバーシティや働き方についての講演も多く、近著に『男性中心企業の終焉』(文春新書)がある。
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内海 かなめ
- KDDI 人事企画部 副部長
1994年入社。人事部、社長付補佐、カスタマーサービス推進部などを経験。2020年4月より人事企画部D&I推進室長。2021年4月より人事企画部副部長 DE&I推進担当。
KDDIにおける、課長職の女性の出産・育児休職取得事例の第1号。
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遠藤 祐子
(モデレーター) - 一般社団法人MASHINGUP理事(代表)、MASHINGUP編集長
2012年株式会社メディアジーンに入社。2015年より同社執行役員。2019年よりダイバーシティ&インクルージョンを考えるメディア『MASHING UP』の編集長として制作・運営に携わる。2022年より一般社団法人MASHING UP 理事。
今なぜ、女性活躍なのか?
遠藤 :まず、KDDIの現状を理解することから始めたいと思います。内海さん、KDDIではDE&Iをどのように捉え、活動を推進していますか?
内海 :KDDIでは中期経営戦略のなかで「多様な人財の活躍」をテーマに掲げています。DE&I推進する上で、「個々の違いがチカラになる」をゴールとしており、その第一歩としてジェンダーギャップの解消に取り組んでいます。
現状ではばらばらになっているスタート地点を合わせていく活動として女性活躍を推進しています。性別に関わらず、すべての社員に「なぜ、女性活躍が必要か?」を理解してもらう一環として、今回のイベントを企画しました。
KDDIでは、D&I(Diversity and Inclusion:「多様性」と「活かす」)に「エクイティ(Equity:公正)」を加えた「DE&I」の実現を掲げています。
エクイティとは、個々の社員に合わせた支援を行いながら、公平な土台を作っていくことですが、これを明文化することで、女性が自分らしいキャリアを作っていく上でも、ハードルを取り除いて、生き生きと働けるようにしていきたいと考えています。
まずは競争環境を整えることが必要
遠藤 :浜田さん、女性の働き方を取り巻く現状についてどのようにお感じですか?
浜田 :この20年から30年、女性が評価されるには、男性と同じかそれ以上に頑張る必要がありました。「管理職になった女性は男性よりも残業時間が多かった」という外部の調査結果もあります。
多くの女性は、出産後、仕事を続けたいという意思を優先して、マミートラック(※)の状態を甘んじて受け入れています。でも、そもそも家事も育児もワンオペ状態で、仕事でも結果を出すのは困難です。「管理職をしてみない?」と会社や上司から提案されても、出産後の10年間は仕事と子育てとの両立で精一杯で、「無理です!」と答えるしかないのです。
「エクイティ」とは真の公平性と訳されることが多いですが、それぞれの人に合った支援をし、能力を発揮できる環境を整えることだと思います。例えば、育児や介護のための時短勤務は、女性の利用率が圧倒的に高いと思います。上司も当事者も誰もが「時短勤務は女性が取るものだよね」と思っていますが、そもそも男性も育児をすべきです。そこから変えないと公平にはなりません。
働き方、評価の仕方、リーダー像のあり方を見直し、働く土壌や競争する環境を公平に整えた上で、「一歩踏み出してみよう」と後押しして、女性のマインドセットを変えていくことが必要だと思います。
※マミートラック:母親となった女性が産休・育休から復職した際に、自分の意思とは無関係に職務内容や勤務時間が変わったり、その結果社内における出世コースから外れていったりする事象。
ロールモデルはいない? 理想のリーダー像を自ら作る
遠藤 :次のテーマは「組織」です。最近は、女性がキャリアを歩んでいく上で、社内に「ロールモデルがいない」という声がよく聞かれます。内海さん、KDDIはいかがですか?
内海 :KDDIは女性社員の比率が低く、女性の管理職も約1割ほどです。「現在の管理職はすごく頑張って仕事をしている」と若い世代には見えているようなので、尻込みして「私にはできない」と思っている若手の女性社員がいるという声は聞かれます。
遠藤 :管理職には、とてつもなく頑張っている人しかなれないというイメージですね。
内海 :これからは、いろいろなリーダー像があって良いと思います。従来の、メンバーを引っ張っていくようなリーダー像だけでなく、自分の強みを活かしてリーダーシップを発揮するような、さまざまなロールモデルが誕生すると良いと感じています。
浜田 :女性の方々からこの「ロールモデル不在問題」を相談されると、私は「ロールモデルはいません!青い鳥は一生探してもいません!」と言っています。「この人を100%モデルにしたい!」という人なんていないんです。
でも、「この先輩のここを真似したい」「あの男性上司の営業スタイルを学びたい」と思ったら、その部分を真似すれば良いのです。「パッチワーク」みたいに、寄せ集めで自分なりのリーダー像を作っていくのが良いと思います。
内海 :組織では上司と部下の関係が必ずあります。女性がキャリアを作っていく上で、上司の影響は大きいとお考えですか?
浜田 :とても大きいと思います。キーパーソンですね。出産後もキャリア形成に前向な女性は、「若いときに上司に期待された経験がある」という調査結果があります。難易度の高い仕事を担当させたり、グループでのリーダーを経験させたりなど、上司が積極的にチャンスを与えているのです。
それと、複数の部署を経験した女性も、前向きと調査では出ています。社内にあるさまざまな業務を知り、知り合いが増えて、情報が入ってくるようになる。そういうことも自信につながります。
できるだけライフイベントの前に、上司が女性社員にどれだけ期待をし、機会を与えて、厳しい面も含めて男性社員と同様に鍛えているかがとても重要だと思います。(後編に続く)