カルチャー
2025/05/30
リーダーになる不安や葛藤をどう乗り越えてきたのか
なりたいリーダー像を見つけるために

2024年10月1日付でグループリーダーに任用された新保礼子。ライフイベントやコロナの影響もあり約5年間業務から離れた時期もあり、グループリーダーになるまでにはさまざまな不安や葛藤がありました。当時の上司である濱田と共に、新保がどのようにして、そしてどんな思いで壁を乗り越えてきたのかをインタビューしました。
※所属および役職名はインタビュー実施当時
目次
■インタビュイー略歴
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新保 礼子
- グローバルコンシューマ事業開発本部 キャリアビジネス部 グループリーダー
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濱田 達弥
- グローバルコンシューマ事業開発本部長
ポジティブな気持ちで行動し続けた若手時代
新保さんのこれまでのキャリアを教えてください
新保:新卒採用のタイミングでは、通信の力で人と人をつなげたいという思いから通信業界を中心に就職活動を行い、他社通信キャリアに就職し代理店さま向けの販促活動など担当しました。そこでもっとコンテンツサービスについて深く学びたいと思うようになり転職。交通案内サービスを手掛けるIT企業で海外向けサービスの提供に携わるなど、そこでグローバルビジネスの面白さや魅力を知りました。
その後、より多くの人々の生活を支えるようなグローバルサービスの立上げと海外転勤を夢見てグローバルビジネスの世界でキャリアを研鑽したいと考え、KDDIに入社。入社後は「KDDI Open Innovation Fund」立ち上げメンバーとして、新規事業開発に携わってきました。
濱田:新保さんとはたくさん話をしてきたけれど、KDDIに入社する前のことはほとんど初めて知ったよ。その後、新保さんにはブランクがあるんだよね。
新保:そうなんです。出産もあったし、2017年にはパートナーの海外転勤に同行するために休職に入りました。コロナの影響で日本に帰国することができず、休職期間のリミットを迎えてしまい、一度退職することになりました。
キャリアの停滞を避けるために、休職中からアメリカの大学院に通っていたのですが、その後も「グローバルに関わる仕事がしたい」という思いは消えず、2022年には再雇用制度を活用してKDDIに復帰。グローバルコンシューマ事業開発本部に配属され、念願だった海外の事業開発に携わることになりました。
濱田:あの時は本当にうれしそうだったよね。でも「自分の目で現地を見たい、そして将来赴任したい!」と言われた時はさすがに驚いたよ。新規事業を立ち上げていくうえで現地のパートナーとの信頼関係構築は欠かせませんが、当時検討していた地域は治安が良いとはいえず、自ら申し出る人はそうそういません。新保さんの勇気は本当にすごいなと思っていました。
新保:KDDIフィロソフィの中に「現地現物で本質を見極める」という言葉があるように、海外で新規事業を立ち上げるなら自分自身の目で現地を見たいと思っていました。治安が不安定な地域にも関わらず、私のような子どもがいる女性でも、快く送り出してもらえたことは本当にありがたかったです。
涙から始まったグループリーダーへの挑戦
その後、新保さんがグループリーダーになられた経緯をお聞かせください
濱田:私はかねてから、新保さんはリーダーとして活躍するスキルがあると思っていたのですが、海外赴任を望む彼女にそれを望むのは忍びない気持ちがありました。なぜなら、国内でのリーダーに任命されれば、一定の期間はミッション持って従事するため、自然と海外赴任の時期はその後になります。しかし、会社の方針で検討地域の新規事業開発が見送りとなったことから、2024年の夏にその旨と「10月からローミング営業グループのリーダーになってほしい」と伝えたところ、いつもは元気で快活な新保さんに号泣されてしまって。
新保:濱田さんがティッシュを探して持ってきてくださいましたね。共に奔走してきた現地のパートナーさまへの申し訳なさと、当時は異なる部署だったので「自分が未経験の業務でグループリーダーが務まるのか」という不安でいっぱいでした。
濱田:新保さんには、高いコミュニケーション能力、オープンマインドな姿勢、物事を前に進めていく力、そして発信力があります。そんな新保さんだからこそ、世界中の通信キャリアとの交渉が必要なローミング営業という仕事で、グループリーダーとしてメンバーを引っ張っていってほしいということを伝えました。
新保さんは「スポンサーシッププログラム」※のスポンシーとして選任していましたので、私から内示して、早々にプログラムのゴールを改めて確認し、それに向かって走り始めたのがこの時ですね。
スポンシーだからリーダーに選んだのではなく彼女が適任だったのです。それをきちんと伝えたいと思っていました。
※スポンサーシッププログラム:2024年4月より経営基幹職候補者の女性社員(スポンシー)の上位職位登用に向け、本部長層(以下 スポンサー)が女性社員のスキルアップを伴走支援するプログラム。任期は原則1年。
本部長層が女性社員のスキルアップを伴走支援する「スポンサーシッププログラム」を開始
新保:濱田さんの「女性だから選んだわけじゃない。新保さんだからやってほしいんだよ」という言葉にいちばん救われました。
昨年度参加した女性向けの社外研修を通じて、女性が管理職になることの社会的な意義を理解してはいたものの、性別関係なく平等に判断いただいたことが、受け入れる大きな理由の一つになりました。

▲まだまだ女性管理職が少ない中で、他部署のスポンシーの方々と、女性管理職特有の悩みを共感し合えることも心の支えになっています」と話す新保
濱田:対話だけでなく経験の場も用意し、体感として理解してもらうことも意識しました。
例えば、海外のパートナー会社のエグゼクティブの方との打ち合わせに同席してもらったことがありました。相対する人が違っても、アイスブレイクから始まって雑談を交えながら議論を行っていく。普段、新保さんが行っている打ち合わせと大きな違いはないことを実際に体験してもらいたかったんです。
新保:ビジネス以前に、人間同士として関係を深めることが重要なんだ、と背中を見て学びましたね。自信がないと感じる時は、単に自分の目で見たり、経験したりしたことがないだけなのかもしれない、と気づきました。
それぞれが考えるリーダーの役割とは
新保さんがグループリーダーに着任するまで、お二人でどのような取り組みをしてきたのでしょうか
濱田:人が何かを成し遂げる時には、3つの要素が必要です。1つ目は、それまで積み重ねてきた経験。2つ目は、今持っている知識や技術。そして3つ目が、自分が成し遂げたい物事をビジュアライズ(想像)できるかどうかです。
経験はこれから積むことができるので、それ以外の部分、「メンターリング」に加え、新保さんが抱える不安や悩みを聞き出し物事に対する視点を変える「コーチング」、経験の場として海外のパートナー会社のエグゼクティブの方との打ち合わせに同席もしてもらいました。
新保:ビジネス以前に、人間同士として関係を深めることが重要なんだ、と背中を見て学びましたね。自信がないと感じる時は、単に自分の目で見たり、経験したりしたことがないだけなのかもしれない、と気づきました。

▲「1on1は、8月だけでも合計7〜8回ぐらい実施しました。これだけスポンシーの支援に時間をかけられているのも、プログラムという枠組みがあるおかげです」と語る濱田
取り組みを振り返ってみて、お二人の感想をお聞かせください
新保:グループリーダーになって3カ月が経ちますが、家族、メンバー、上司や女性管理職の先輩たちと本当にいろいろな方たちに助けていただきました。たくさん応援してもらい不安も少しずつ払拭できました。グローバルで通用するリーダーとして私自身も成長し、メンバーのポテンシャルを引き出しサポートしていきたいです。そしてプライベートでは子供たちにとってかっこいい母でありたいです。まだまだ挑戦です。
数々の取り組みを通じて、自分らしいリーダー像を持てたことはもちろん、少しずつですが、高い視座で物事を判断できるようになったと思います。例えば、経営層の発言一つとっても、その意図や真意を汲み取ろうと意識するようになりましたし、自身の業務を通じて会社にどのような貢献ができるかといった意識もできるようになったと思います。
今回こうして振り返ってみると、私が自然と気づきを得られるように濱田さんがうまく導いてくれていたのかなと思います。

▲濱田からすすめられた書籍の一部。「要所要所に付箋を貼りながら読み進めたのですが、いつの間にか付箋だらけになってしまいました」(新保)
濱田:新保さんがそう感じてくれていたならうれしいですね。いろいろと意識していましたが、私が対話をするなかで特に気をつけていたのは、自分自身の話に置き換えないことです。1on1で多くの上司が行いがちなパターンではないでしょうか。「俺はこうだった。だからあなたも」「俺もこうだった、だからそんなこと」と。聞いている方からすると、「だから?」「私とあなたは違う」といった思いでしょうか。
自分と相手は個性も置かれている環境も違うので、自分自身の話に置き換えたアドバイスがうまく機能しないこともあります。だからこそ、相手が悩んでいること、考えていることに焦点を当てて、そこを深堀りしていくようにしていました。
「上司と部下」という上下関係はもちろん大切です。しかしその関係性がどんなときでもうまく機能するかというと、必ずしもそうではないと思っています。相手が悩んでいるとき、壁にぶつかっているときにはコミュニケーションの仕方を工夫し、上司部下という上下関係を超えて、あくまでも対等な立ち位置で対話を繰り返すことが重要なのではないでしょうか。
今の時代はリーダーの形もさまざまです。相手の心を変えることがリーダーの役割ですから、誰もが同じではなく、その人がなりたいリーダーを目指せばいいと思います。今回の取り組みでコーチングの手法を取り入れたのも、私自身が理想とするリーダー像に「コーチングのスキルと能力」が不可欠だからでもあります。
私たちのようなリーダー(管理職)は彼らがどんなリーダーになりたいかを試行錯誤しながら一緒に考える、そんな存在でありたいと思います。