技術・サービス

2023/11/24

全てが光でつながる時代が来る!オールフォトニックネットワーク

全てが光でつながる時代が来る!オールフォトニックネットワーク

社会の情報化が進むなか、Beyond 5G/6Gの実用化が期待される2030年頃は現在よりもはるかに膨大なデータ処理が必要になると予想されます。そんな未来を迎える重要な鍵となる技術がオールフォトニックネットワークです。オールフォトニックネットワークとは何か、なぜKDDIが取り組み、どのような未来を目指すのか。技術戦略本部の大谷本部長にお聞きしました。

目次

■インタビュイー略歴


大谷 朋広

大谷 朋広

技術統括本部 技術戦略本部 本部長
KDDI総合研究所(※1)に所属していた2000年代、オールフォトニックネットワークの基礎研究を担当。現在はKDDIに帰任し、技術戦略などを統括する。
※1 次世代技術創出のための調査分析、研究開発、実用化までを担うKDDIのグループ企業。

遅延・消費電力も最小限に!文字通り“光の速さで”皆さまのもとへ

遅延・消費電力も最小限に!文字通り“光の速さで”皆さまのもとへ

オールフォトニックネットワークとは何ですか?

「フォトニック」は光のこと。オールフォトニックネットワークとはすべてが光で完結するネットワーク技術のことです。基地局からデータセンターまで、データセンターから皆さまのご家庭までと、あらゆる点と点を光のまま結ぶようにネットワークを構築します。このオールフォトニックネットワークが今世界中で注目を浴びているのです。

これまでのネットワークは光ではなかったのですか?

従来の光を使った伝送は、スタート地点からゴールへ到達する途中で電気信号へ変換をしています。入口と出口は光でも、実は<光―電気―光>の構造でした。それはなぜか。電気信号へ変換したほうが経路制御や多重化などさまざまな処理がしやすいからです。この変換により、離れた場所やいろんな場所とも安定した通信を実現しているのです。

ではなぜ電気変換を行わないオールフォトニックネットワークが、今注目されているのですか?

社会と環境のニーズが変化したためです。光信号は膨大な情報を送ることが可能ですが、前述の通り電気信号へ変換した方が経路制御や多重化などの処理が容易なため、広く普及しています。

しかし来る2030年、Beyond5G/6Gが実用化されていく時代では社会の情報化がますます加速し、膨大なデータ伝送、処理が必要となります。そんな大容量の伝送技術が不可欠な社会において、現在の<光ー電気ー光>技術のまま支えようとすると二つの問題が生まれます。一つは電気変換による遅延の発生。もう一つは大量の電力を消費することです。

そこで低遅延かつ低消費電力を実現できるオールフォトニックネットワークが求められるようになりました。電気変換をしない分遅延は小さくなり、まさに“光の速さ“で届きます。さらに消費する電力も小さく済むため環境にも優しい技術なのです。

KDDI VISION 2030が目指す社会を支えるサステナブルなネットワーク

KDDI VISION 2030が目指す社会を支えるサステナブルなネットワーク

来る時代のニーズとマッチする技術ということですね。

その通りです。KDDI VISION 2030(※2)が掲げる2030年の社会では、多様な価値観を持つすべての人がそれぞれの思いを実現できる世界を目指します。そのような豊かな未来社会を実現するため、KDDIはデジタルツインを活用しさまざまな社会課題を解決していきます。

※2 KDDI VISION 2030は、2030年ビジョンにサステナビリティ経営の要素(企業理念・KDDI Sustainable Action)を加えて、分かりやすく集約したメッセージです。

デジタルツインとは何ですか?

一般的には、デジタルツインとは現実世界のモノや空間をデジタル上で再現する、その技術によって再現されたモノや空間を意味します。かみ砕いていうならば、現実世界の双子を仮想空間上に作ってしまうこと。その双子の仮想空間があれば、色々な実験やシミュレーションができますよね。仮想空間上のシミュレート結果を現実世界へフィードバックし活用できる。

KDDIの考えるデジタルツインでは、仮想空間から現実空間へのフィードバックを重要視しており、仮想空間上での分析・先読み・シミュレートを活用し、現実空間のさまざまな社会問題を解決したいと考えています。

デジタルツインとオールフォトニックネットワークはどのような関係があるのですか?

デジタルツインを実現するためには、今よりもはるかに膨大な量のデータ伝送が必要となります。そのため処理性能の高速化や電力消費量の削減といった課題は、避けては通れません。

KDDIの目指す未来社会を支える通信基盤として、スピードとサステナブルな側面を併せ持つオールフォトニックネットワークの研究開発にKDDIは注力しているのです。

50年以上にわたる、光海底ケーブル研究開発の歴史から受け継ぐ強みがある

KDDIのオールフォトニックネットワークにはどのような特徴がありますか?

KDDIと光ネットワークは、切っても切り離せない関係です。私たちは50年以上にわたり、光海底ケーブルの研究開発を進めてきました。数千kmから1万km離れた諸外国まで品質を落とさずに伝送する技術や、より多くの情報を届ける技術を磨いてきました。

こうした技術を発展・継承することで低遅延・低消費電力というオールフォトニックネットワークの特長に加え、KDDIは①長距離化、②大容量化、③高信頼化の3つを強みとするオールフォトニックネットワークの確立を目指します。

光海底ケーブルシステムの伝送容量は30年前の約100万倍に。海底という過酷な環境でも大容量の信号を遠くまで伝送できる技術を実用化してきました。

▲光海底ケーブルシステムの伝送容量は30年前の約100万倍に。海底という過酷な環境でも大容量の信号を遠くまで伝送できる技術を実用化してきました。

培ってきたKDDIの技術を存分に発揮できそうですね。

光ネットワーク技術は日本が先行しているといわれています。日本として技術力をきちんと打ち出すべき領域です。一方で海外企業の勢いも増しており、今後は競争が激化していくでしょう。そうしたなかでこれからも業界全体をリードしていくためには、コストや仕様面でも日本先行を目指す必要があります。

そのためにはKDDIのみならず、事業者間でより良いネットワークをつくろうと切磋琢磨できる環境が必要です。現在、さまざまな業界団体や研究機関がパートナリングを強化しています。

グローバル標準の獲得に向けて組織の壁を越え、ともに前へ

KDDIとしてはどのような活動に取り組んでいるのでしょうか?

KDDIにとってオールフォトニックネットワーク技術の最終的なゴールは、グローバル標準を獲得し、業界をリードしていくことです。そのためKDDI総合研究所での研究開発を中心に、国家プロジェクトなども活用して複数のパートナーとのオープン・イノベーションを進めています。KDDIは長年にわたり国内で光ネットワークの研究開発を牽引してきましたが、グローバル標準を獲得するためにはさまざまな組織と手を取り合うことが近道となるためです。

具体的には関連フォーラムに参加し、世界中の技術者たちと標準化に向けた議論をしたり、施策・実験を行ったり。国際会議でKDDI総合研究所の研究成果を発表することもあります。直近ではKDDIが強みを持つ「デジタルコヒーレント伝送技術」の新たな実験に成功。これが高く評価され、国際会議で共有されました。

オールフォトニックネットワークを推進するため、分野ごとの関連業界フォーラムに参画。標準化に向けてさまざまな研究機関や事業者とパートナリングを強化しています。

▲オールフォトニックネットワークを推進するため、分野ごとの関連業界フォーラムに参画。標準化に向けてさまざまな研究機関や事業者とパートナリングを強化しています。

こうした活動の一環として、2023年2月にNTT主導の「IOWN(アイオン)Global Forum」へも参画しました。オールフォトニックネットワークのより早い実用化、その先にあるデジタルツインを活用したKDDI VISION 2030が掲げる社会の実現へ向けて、およそ120の参加企業との共創を進めています。

今後の目標を教えてください。

IOWN Global Forumなどのオープンな場を活用しながら、研究開発や標準設計の策定を進めることで、グローバル標準獲得に向かって前進したいと思います。2025年度以降に部分的な実装を、そして2030年頃にはBeyond 5G/6G時代にふさわしいネットワークとして導入し、皆さんの豊かな暮らしを支える基盤を目指します。

今、世の中には環境問題や人口減少など数多くの課題があります。それに対して我々は、核となる通信をさらに進化させ、自社だけでなくパートナー様のさまざまな技術を使って一緒に課題を解決していく。そんなワクワクする世界をともにつくっていきたいです。

この記事をシェア

Facebook LINE Twitter

RECOMMEND おすすめ記事

VIEW MORE

RANKING 人気記事ランキング